2020年10月から、TestDaFもデジタル形式を導入、日本では2021年11月東京ゲーテでようやく受験可能になりました。
以前も書きましたが、従来のペーパー形式とは異なる点がいくつかあり、それによって対策方法も変わってきます。それを、ペーパーの時と同じように、読解、聴解、作文、会話の順で僕なりに解説していきます。
この解説記事を書くにあたって参考にしたのは、
TestDaFのホームページと、
ドイツの教材出版社としてはHueber社同様におなじみ、Klett社が出版している、デジタル版TestDaF対策教材第一弾でもある“Mit Erfolg zum digitalen TestDaF”です。
今回は会話パートです。問題は全7問、すべてを約35分で回答します。
テスト全体の注意点
その前に、ここで改めてデジタル形式のTestDaF全体で気をつけるべき点を言っときます。
1.1問ごとに制限時間がある
2.一回進んだら後戻り不可
なので、時間配分の自由度がかなり減ります。一問一問、集中して回答しましょう。
時間配分をやりくり
会話パートでは、聴解パートと同じように1問の中で準備時間30秒、回答時間1分といったように、何を何秒、何分の間でするように指定されています。
ただ、他にもオーディオを聴く時間、文章を読む時間と聴解の時よりも項目が多く、そこから得る情報もまとめて回答という流れになります。
第1問 同級生のお悩み相談
大学の同級生の悩み事にアドバイスする感じで回答します。
同級生が相談してくるのは、バイト、時間割、奨学金など、いずれも大学生活に関するテーマです。
これは正解不正解を導き出すような問題ではないので、内容に矛盾が生じないように自分の意見をを考えましょう。
準備時間は30秒、回答時間は45秒です。
第2問 同級生の提案に対して意見
複数の同級生と軽い話し合いをする雰囲気で、そのうちの一人が大学がこういうシステムを採り入れたらいいのにと提案をしてきます。それに対して、メリットとデメリットを挙げ、最終的に自分はどういう案がいいと思うかを表明して締めくくります。
同級生の考えに対して完全に賛成、反対という結論にしなくても、この部分はいいが、デメリットはこうカバーすべきという感じでハイブリッドな回答でも大丈夫です。
個人的には、ここはzwar~、aber~や、einerseits~、andererseits~といった対比を表すイディオムが使いこなせているかが第一に問われているような気がします。もちろん、それに合わせて内容も作っていきましょう。
準備時間は45秒、回答時間は1分30秒です。
第3問 記事の要約
350語ぐらいの記事を読んで、内容を要約します。記事は4分間表示され、その間に読み込んで、要約のために必要な情報を抜き出していきます。
記事は、基本的に
① 主題(問題提起)
② 定説、仮説
③ 現在の社会全体としての傾向
④ ②、③の検証方法
⑤ 検証結果
⑥ 結果を踏まえた結論
といった構成になっています。
自分の意見を入れない
注意して欲しいのは、ここではあくまで要約だけを求められており、自分の意見をはさむ余地はないということです。
記事を読んで理解した内容を伝えることに集中しましょう。
準備時間は前述のように4分、回答時間は2分です。
第4問 同級生の意見とデータの矛盾を突く
とある授業で、グラフが出てきてそのテーマについてディスカッションをします。その後同級生の一人が、テーマに関して自分の意見を述べるのですが、グラフ上のデータと矛盾している点があります。
皆さんは、一受講者として同級生の意見とグラフを見比べて、それらの相違点に言及したうえで、自分はこのテーマに対してどう思うか述べることを求められます。さらに自分なりの根拠も付け加える必要もありひな形は
・同級生はこう言っているが、(同級生の意見の要約)
・グラフのデータとこういった点で一致しない。(データとの矛盾点を指摘)
・さらに/ただし、本テーマにはこういうことが言える。(自分なりの根拠)
・グラフのこう言う点もその根拠になる(データで自分の根拠をサポート)
・以上の点から、私は本テーマに関してこういう意見である。(自分の立ち位置の表明)
といった感じになります。
難易度は高いが、同調もあり
教材やTestDaFのウェブサイトを見る限り、同級生の意見の矛盾を突いた上で自分の意見を述べるので、回答は同級生と対立するようになっている傾向に見えます。しかし、皆さん自身が同級生の意見に同調し、十分な根拠をグラフのデータと共に示せるのであれば、同調しても構いません。
データと他人の意見を分析した上で、自分はどう思うのかを表明するのが課題なので、ここも意見自体に正解不正解はないのです。
問題文が読まれた後、最初にグラフが出てきて、30秒後に同級生が自分の意見を言います。
その後1分30秒回答を準備する時間があり、回答のためにも同じく1分30秒設けられています。
第5問 プレゼンテーション
会話編で一番の目玉はこの第5問じゃないかと個人的に思います。皆さんの将来のために脅しておきますと、ドイツの学生は、日本よりもプレゼンをする機会がずっと多いのです。
今回は個人で一つのテーマについて発表です。テーマと発表するべきポイントは、問題文が読まれた後に出てきて、それに沿って回答を考えます。
このポイントは、プレゼンの構成そのものであり、回答では順番を崩さずすべてに言及しないといけません。
また、ポイントの一つ目はテーマから考えられる選択肢の紹介にあてられる傾向があります。その後のポイントは、その選択肢を差別化するために設けられているのが今のところ王道です。
まずあいさつ、テーマと構成の紹介、続いて各ポイントに言及、締めの言葉というのがひな形になります。
回答を考える時間に何か具体的なデータが出てくるわけではないので、ポイントの内容は自分でテーマとのつじつまが合うように考えていきましょう。
また、ここでは「だからこれがベスト」みたいな結論は求められていません。それぞれの選択肢の差別化に注力しましょう。
準備時間は2分、回答時間は2分30秒です。
第6問 同級生の意見、テーマ全体に対する立場を表明
大学のセミナーであるテーマが取り上げられ、同級生がそれに対して自分の意見を述べます。それを聞いた後、教授が回答者である皆さんに話をふってくるまでの間に、
・同級生の意見に対して賛成、反対どちらか
・自分はそれを踏まえて、テーマに対して賛成、反対どちらか
以上2点を考える必要があります。
第4問との違い
ざっと読んでみるとほとんど第4問と同じです。ただまったく同じというわけではなく、ちょっとだけ答え方も変わってきます。
まず、第4問にはあったグラフはありません。あくまで第6問では他人の意見と自分の意見を比べることがひとつの命題です。
次に、同級生は自分の意見を1分近く喋ります。第4問では30秒前後なので、受験回によっては倍ぐらいに増える計算になります。これを回答の冒頭で要約しなければいけないので、集中して、重要な情報を取りこぼさないようにしましょう。
それを踏まえてひな形を作ると、
・同級生はこういう意見だった。(同級生の意見の要約)
・それに対し私はこう思う、なぜなら…(同級生の意見に対する自分の立ち位置と根拠)
・テーマ全体に対して、私はこう思う。なぜなら…(テーマ全体に対する自分の立ち位置と根拠)
といった感じになるでしょうか。
1番目と2番目は同級生が意見を述べたときの根拠ごとに繰り返すのがいいでしょう。同級生が挙げた一つ一つのポイントをちゃんと拾えたかというアピールになります。ただし、ここではあくまで同級生の意見に対してどう思うかを、理由付きで表明することが大事です。
3番目で、それまでを総合して、自分はこのテーマに対してどういう意見かを、これまた理由付きで述べましょう。
最初に同級生の意見が1分ぐらい、その後準備時間1分30秒、回答時間は2分です。
第7問 大学の新しい決め事に批判と代替案提示
大学の学生課から、新しい学内規則が発表されます。内容は学生側にとっては不都合なもので、皆さんは今学生側の代表として学生課に抗議する場にいます。
新しい規則は、回答時間になってもスクリーン上に残っています。
なのでただこの規則は嫌だと批判するだけではなく、根拠を述べたうえでいかに不都合か、またどういう代替案をどんな理由で提案したいかというのが発言内容になります。
団体の代表としてふるまう
第1問から第6問までは個人の意見を言う場でしたが、ここは団体を代表しています。なので、一人称も”Ich”ではなく”Wir”にしながら回答しなければいけません。今までの感じで「私は…」と言い出すと、団体の総意ではないと見做されてしまいます。
準備時間は1分30秒、回答時間も1分30秒です。
自分のペースを崩さないように
会話パートはテストの最後ということもあって、今まで蓄積していた疲労を感じながらの受験になるでしょう。そんな中、細かく設定された制限時間に意識が向かないかもしれません。焦らず、気を抜かず、最後まで頑張ってください。
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!
別のブログも読んでいただけたらうれしいです。
んでは、また~。
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