大学卒業にあたり、最後の難関となるのが卒業論文。日本でもドイツでも同じようなプロセスですが、もしかしたらちょっとした違いがあるかもしれません。
そこで、僕の体験をもとに、ドイツの大学で卒業論文を書くときにやるべきことを書き連ねていきます。
今回は、実際に卒論を書き始める際の大まかな注意点についてです。
指定のフォーマットを守る
これまでレポートを書いてきて、教授から学部指定のWordのフォーマットを指定されてきたはずです。フォントの種類、大きさ、行間、文献の引用形式などなど、卒論を書き始める最初の段階である程度Wordの設定をしてしまいましょう。
これをしっかり守っていないと減点になるので、気をつけてください。
文献を探す
今のご時世、本そのものだけでなく、ネットにアップロードされているアカデミックジャーナルやニュースなんかも卒論の材料として活用されます。アカデミックジャーナルは、通常なら自分でアカウントを作って記事を探さないといけないのですが、全世界の大学生専用インターネットサービスeduroamに加盟している大学でなら、構内にいるだけで自分の端末から何の手続きもなくジャーナルのポータルに入れます。
ジャーナルの記事は、基本的には大学の図書館のホームページで文献と同じように探すと出てくるので、自分の読みたいものが出たらクリック、PDF保存は気軽にできると思います。
あくまでeduroamが有効な場所にいることが前提です。例えば学生寮内だとeduroamの範囲から外れている場合があるので、ご注意ください。
目次を作る
教授にテーマをプレゼンした時に、大体の構成は考えたけど、具体的に章立てまでしていない人もいるかと思います。もしくは教授によっては、そこまでやってから相談しに来るように言われることもあるかもしれません。
そうなるとこの段階では終わっている人もいるかもしれませんが、Wordの見出し機能を使って、各章とパラグラフをまとめて目次を作っちゃいましょう。書いてる時に、いちいちスクロールして書きたいページに行くよりも、目次のパラグラフをクリックするだけでそこに飛べた方が何倍も楽です。
ケーススタディの実証パート
本や記事だけ読んで卒論を書けるというケースは、やはり少数派になっていると言わざるを得ません。そこで、ケーススタディ(Fallstudie)を組み込む必要が出てきます。
何かしらの形で、今扱っているケースは、現場で自分が想像している通りなのか、具体的にどんな課題があるのか、まずデータや記事などで調べてから自分の理論にあてはめます。さらに、それを確かめるために、現場にいる人達から教えてもらって書き上げる実証パートがあります。実証の取り方は以下の通り。
アンケート
当事者の声を拾うという意味では、手っ取り早い且つメジャーな手法です。僕も授業で、最終セメスターより前に、アンケートの作り方と取り方を教えてもらいました。ネットで作って拡散しやすく、解答データの分析を簡単に組み込めるので、多くの学生がこれを採り入れています。
作る過程でネイティブチェック
作成するときは、構成と内容を教授に、ドイツ語の文法はタンデムパートナーなどにチェックしてもらいましょう。これができないと、アンケートに答える人たちに、こちらの聞きたいことが伝わらない恐れがあるので、手を抜かないようにしてください。
また逆に友達の力になろうと、僕も過去日本語学科の同級生がプロジェクトやら、それこそ卒論で日本語のアンケートを作っていたのをチェックしたことがあります。最終セメスター間近の彼らでもきれいな日本語で作れるとは言い難く、やはりネイティブの目から見て、質問が理解されるかどうかというのは見てあげた方が親切です。
…指摘して機嫌を損ねられたらそれまでですが、それはその人の器と思って諦めましょう。
不特定多数を狙いきれないリスク
アンケートってどういう形で広めたらいいと思いますか?
我々の世代なら既にSNSが十分普及していたので、TwitterやらInstagramやらを使うことはすぐに頭に浮かぶでしょう。
なので、回答者数は十分集められる人は多いのですが、SNSだけが頼りとなると、解答するのは自ずと友達とかに限定されてしまいます。世代、性別、社会的ステータスを幅広く網羅するのは、ただの学生には無理難題です。
インフルエンサーでない限り、真の意味で不特定多数にアンケートをばらまけることはないのです。教授もそれは分かっているのですが、敢えて目をつぶっているような印象を受けました。
ちなみに僕はメインの担当教授にアンケートやりたいって言ったら、論文の質を上げたいなら後述のインタビューとパネルディスカッションにしろって一蹴されました。
インタビュー
自分が聞きたいことを専門にしている人たちアポイントを取って、質問を投げかけていくことで、アンケートよりも密度の濃い回答を得られます。アンケートより手間がかかるし、質問内容もより詳しくしないと実りが期待できないので、準備段階はしんどいと思います。
それでもその回答には、ケーススタディの章を書くときの説得力がついてきます。不特定多数の人に質問を投げかけるのではなく、自分の疑問に思うことの前線に立つ人から意見をもらうので、自分が文献から得た理論との答え合わせがよりしやすいと思います。
パネルディスカッション
上記のアンケートとインタビューの中間みたいなやり方です。質問を自分で作って、参加者を募り、質問について話し合ってもらいます。専門性があるわけではないですが、アンケートより絞られたセグメントの人たちに集まってもらうので、自分のテーマについてより真剣に考えてくれて、そこから得られる回答も文章化しやすいものになります。
理系は実験やフィールドワークも
理系の場合は、日本の大学と同じように、自分の研究データを卒論に組み込むことで検証結果を出すことになります。朝から夜中まで研究室にこもりっきりっていうのは僕は想像できませんが、テーマによっては十分あり得る話です。また、どこかに遠征してフィールドワークによってデータを採取するというのも一つの手法です。
企業で研究
文理関係なく、ドイツでは卒論を書く際、企業に籍を置いて、現場の様子を観察するという方法もあります。メジャーと言えるほどではないですが、割とある話だそうです。
となると、教授以外に、企業の人事なり研究対象になり得る部署に、その企業で卒論を書くという妥当性を理解してもらう必要があります。履歴書、カバーレターの他に、研究したい内容と企業の方向性が同じであるという旨を説明できるものを送って、応募しましょう。
当然ながら一発で決まる保証はないので、複数の候補をピックアップする必要があります。
教授に進捗報告
理論を固めて、ケーススタディで比較実証、という形でコツコツ進めていきますが、一人でやってるとこれでいいのかと不安になるときがあります。そんな時は担当教授に相談しに行きましょう。文献選びや、ケーススタディの集め方を教えてくれると思います。
時間をとってもらうのに苦労
…とうまく行けばいいのですが、なんせ教授なので、大学の中で授業をしたり、自分の研究のために学会や学外に出たりと多忙な人が多いのです。捕まえるのが大変。
一応、ドイツの大学教授は担当科目のことならなんでも相談可能な時間を一週間の中で30分から1時間設けているのですが、そこに学生が殺到して、自分の番が回ってこないままその相談のための時間が終わってしまうこともよくあります。
それで諦めているわけにもいかないので、何とかアポイントを取るために、メールアドレスを控えて、可能ならオフィスや携帯の電話番号も教えてもらえるよう頼んでみましょう。
前の記事で書きましたが、僕はお世話になったマーケティングの教授と、異文化コミュニケーションの教授に担当になってもらいました。でも異文化コミュニケーションの教授の方と全然連絡が取れず、まともなアドバイスがもらえないまま提出することになってしまったのです。
結局一回も会えませんでした。
ぶっちゃけこういう事態は避けられないと思います。それでも、ここが教授に関わる最後のチャンスなので、できるだけアポイントを取る努力をしましょう。
ドイツ語の表現
外国人でありながらドイツで卒業間近の学生をしている皆さんなら、一応それなりにドイツ語を操って生活しているはず。ただ、アカデミックな文章を書くとなると、まだマスターしていると言える人はほんの一握りです。
タンデムパートナーに頼んでみよう
自分のドイツ語がどれだけ学問を論ずるに足るレベルなのか、ネイティブはどんな言い回しをするのか気になりますよね?ただ内容以外のことを教授に相談しに行くと、限られた時間の中でうっすい話しかできないので、あまりお勧めできません。
アンケートの段落でも触れましたが、タンデムを利用してはどうでしょうか。ドイツ語でこう書きたいけど、うまい言い回しがないかと気軽に聞ける人がいるのは心強いです。相手が学生なら、いずれ彼らも卒論を書く時が来るので、ただ骨の折れる作業をお願いするということにはならないと思います。
ただし、これは自分と相手がそこまで頼み合える間柄であることが条件です。これまでに宿題を手伝ったりとか、相手を助けてあげられたかどうかがカギになります。なので、お願いするときはちゃんと人を選んでからにしましょうね。
内容をサポートする材料を揃える作業
注意点はいっぱい書きましたが、日本で卒論を書いたことがあるなら、耳にタコな話だと思います。ただ、頭では分かっていても、体がついて来なければ行動にはなりません。
少しでもいい成績を残せるように、ぜひこの記事の内容をガイドラインとして活用してください。
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!
別のブログも読んでいただけたらうれしいです。
んでは、また~。
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