ドイツの大学で卒業論文を書く③ 文系の卒論構成編

大学生活

大学卒業にあたり、最後の難関となるのが卒業論文。日本でもドイツでも同じようなプロセスですが、もしかしたらちょっとした違いがあるかもしれません。

そこで、僕の体験をもとに、ドイツの大学で卒業論文を書くときにやるべきことを書き連ねていきます。

今回は、文系学部を卒業した僕の卒論の構成についてです。Word 2016の機能をもとに解説します。

理系とは勝手が違うかもしれませんので、ご了承ください。

Inhaltsverzeichnis(目次)

目次です。必要性は言うまでもないですね。

Wordの見出し機能で各章のタイトルを区分けをすると、目次を出すときに一発でその区分けに沿って打ち出すことができます。あとから新しい章を入れても更新すれば反映されます。設定でページ数も入れることができるので、ぜひ活用しましょう。

Modern American Drinks by George J. Kappeler (1895) page 12-13
(出典: Flickr “Modern American Drinks by George J. Kappeler (1895) page 12-13” by MetaGrrrl)

Abkürzungsverzeichnis(略語表)

データや記事を参考にするときに機関の名前などを複数回出すときは、初出以外は略語にして出すこともできます。例えば国土交通省なら初出の時に、Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism (MLIT)として、以降はMLITで通じるようにしておくのです。

そうして論文に出す略語の一覧を、まとめて論文の前に列挙しておきます。略語はアルファベット順に並べましょう。複数出すので、こちらはページ数は不要です。

VALLEY OF DECISION - Acronyms and Abbreviations
(出典: Flickr “VALLEY OF DECISION – Acronyms and Abbreviations” by manhhai)

Abbildungsverzeichnis(図表リスト)

論文の中の図表や画像を出てくる順にナンバリングして、これも論文の前に番号順、ページ数と共に紹介します。リストには番号(Abbildung 1, 2,…)、タイトルとページ数が必要です。

論文の中に図表を差し込むときには、番号、タイトル、出典を書いておきます。どこかからデータを借りて、自分でグラフなどを作成した場合は、Eigene Darstellung in Anlehnung an (出典)とします。

Einleitung(導入)

本題に入る前に、これはどういう論文なのかを説明するパートです。問題提起、調査方法などを書いて、論文の骨組みを明記します。

Problemstellung(問題提起)

大学でレポートを書いてきてさんざん言われることですが、ここは動機を書くところではありません。データを引き合いにしながら、今こういう状況だから、ここが問題になるのではないかと中立的に書きましょう。それから、ではこの角度からこの状況を分析すればどんな結果になるのかをこの論文に残す、というあくまで主観に見えないような書き方を心がけましょう。なので、論文全体に言えることですが、ichは使わないことを意識してください。

Zielsetzung und Forschungsfragen(論文のねらいと指標になる疑問)

今から書く論文で、何をどの角度から明らかにしたいのかがねらいです。そして、その結論を出すために、どんな疑問をこの論文で解消していくかを3つぐらい列挙します。研究内容のゴールに向かう指標となるような疑問(Forschungsfragen)を思い浮かべてください。僕の教授は、それらの疑問は箇条書きでいいと言っていましたが、別の教授は文章に組み込んで書くように言うかもしれません。

Methodik(調査方法)

後述しますが、前半は理論を固めるパート、後半はそれを使ってケーススタディを分析していくパートになります。先ほどのForschungsfragenにも触れて、これらを明らかにするために、どう調査していくのかをここに書きます。

理論パートについて

理論パートは文献、ネットのジャーナル記事、メディアを駆使していくのですが、僕の場合はMethodikの時点で代表的な引用元についても言及するように教授から指示がありました。この調査を経て、仮説を立て、次のパートに移ります。

ケーススタディ分析パートについて

次のケーススタディ分析パートは、質的分析(Qualitative Forschung)と、量的分析(Quantitative Forschung)に分かれます。

質的分析については、ケーススタディのモデルに関して調べて、今回の研究対象としてふさわしいことを説明していきます。オンラインや文献で調べられることからまず現状を整理して、そのテーマに携わる関係者に現状や課題を伺い、調査結果に反映させることでより説得力のある論文になります。

量的分析は、いわゆるアンケートやパネルディスカッションで、研究対象の当事者ではない人たちの自由な意見を集めるのが目的になります。外からはこの研究対象がどう見えているのか、質的分析で得た研究結果と比べて浮かび上がった点をForschungsfragenにあてはめるとどういう分析ができるのか、という考察に使います。

Gliederung(論文の構成)

この論文の章の数、各章をどういった内容にしていくのかを説明します。調査方法に関しては、既に触れているので、ここでは各章2~3行ぐらいで内容を軽く説明するぐらいで大丈夫です。

Theroretische Voraussetzungen (理論パート)

文献などで、ケーススタディの分析に必要な理論を書いていきます。今まで大学の授業で勉強してきた内容を思い起こせば、どの文献を読めばいいか検討がつくかと思います。それに加えて、自分が研究したいテーマに対して必要な理論で分析されている記事や論文があればラッキーですね。

参考文献管理大事!

文献や参考にする情報源は、Wordの参考資料タブ、引用文献と文献目録にある資料文献の管理の機能を使って登録します。文献、ネット記事など、入力に必要な機能はそれぞれです。登録したら、引用元として文の中に出したいときに、Harvardなど大学指定の引用スタイルを選択して、引用文献の挿入で簡単に差し込むことができます。

References
(出典: Flickr “References” by Ged Carroll)

後述しますが、論文の後に付録で参考文献の目録を作成するときに、事前に参考文献を登録しておくとすごく楽なので、こまめにやっときましょう。

Zwischenfazit(理論パートのまとめ)

調べた理論をまとめて、仮説を立てます。研究テーマはこの理論によってこの点が明らかになるべきで、総合するとこのような結果が得られるべきだというところまでを書いてしまいます。Zielsetzung und Forschungsfragen(論文のねらいと指標になる疑問)のパートでも紹介した、Forschungsfragenに対応させる形で仮説を並べるのがいいと思います。

これは次のケーススタディの検証材料として事あるごとに引っ張り出すので、明確な分析結果を出せるように心がけましょう。

Fallstudie(ケーススタディ)

理論パートで導き出した結論は、いわばまだ机上の空論という状態です。ここでは、その結論は実際どの程度正しいのか、また理論だけでは気づけなかった別のものの見方があるのかを比較検討していきます。

ケーススタディのやり方については、別記事でまとめているので、こちらをご覧ください。

結果をまるまる書かない

別記事で書きましたが、大概の場合卒論にはページ数に制限があります。ケーススタディの結果全て、となるとものすごい分量になってしまい、制限をオーバーする可能性が高まるので、要点が伝わるように書いていきましょう。

後述しますが、結論やらすべてを書き終えて、付録という形でケーススタディの結果をつけ足すことができるので、そちらで思う存分書いていきましょう。

Schlussbetrachtung(終章)

研究を終えて、自分なりにどのような結果とするかをここでまとめます。ただ結論を書き連ねるだけでなく、研究テーマの今後の発展の方向や、自身の研究に足りていなかった点を反省することも求められます。

Fazit(結論)

理論パートとケーススタディを比較して、この論文では、研究テーマに対してどのような結果を得られたのかをまとめます。

まず冒頭の内容にさかのぼり、この論文の目的は何だったか、という点にも言及し、大体2ページぐらいで結果をまとめましょう。

Ausblick(不足していた研究視点)

結論を受けて、どの研究視点がさらに補われるべきだったかをここで書いていきます。時間、分量、手に入る研究リソースを総動員したとしても、恐らく分析したいことすべてを書ける、ということはないのではないでしょうか。

この視点が欠けているので、この点については言及できればより核心を突いた研究結果が出ただろうということを一つ二つ短く書いておきましょう。

Kritische Reflektion(不足していた研究方法)

調査の過程を振り返って、足りないところはどこだったかを分析します。先述のAusblickが研究視点に関しての自己反省であることに対し、こちらでは調査方法に関しての自己反省になります。

参考文献に、マーケティングリサーチに関して言及しているものが少なかった、インタビューをする際に、ダイレクトな当事者にアポイントが取れず、研究内容の説得力が弱くなったなど、こちらも一つ二つ軽く書きます。

AusblickとKritische Reflektionの違いが、提出ギリギリになるまでさっぱりでした。

Anhänge(付録)

主にケーススタディで、自分がアンケート、インタビューなどで収集したデータをここにまとめます。本文には重要な結果を組み込むに留まりますが、ここでは詳しく書いて大丈夫です。

ちなみに僕の場合、このパート以下は論文のページ制限に引っかからないという決まりだったので、分量は気にしないで自分が調べた結果を好きなだけ載せてました。

Literaturverzeichnisse/Quellenverzeichnisse(参考文献、参考資料リスト)

Wordの参考資料タブ、引用文献と文献目録の機能を使って作成します。ジャーナル記事や文献、ネットのサイトなどの引用元は全部一緒に、アルファベット順に並びます。資料文献の管理で入力しておいた情報があれば、それをもとに文献目録作成機能でぱぱっと作れちゃいます。

目次同様、後から追加した文献なども、目録を更新すればちゃんと反映されるので安心してください。

自分が生み出す研究

最初で最後かもしれませんが、皆さんが卒論を書くというなら、それは研究なのです。自分が書きたいことを論文という形にして残すため、テーマに対してどこまで真剣に向き合えるか。それまでどんなことが起こっていたとしても、ここにモチベーションが持てていたら、皆さんのドイツ留学は大成功です。

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます!

別のブログも読んでいただけたらうれしいです。

んでは、また~。

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